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【言い訳】なぜEarthとMixは自分を「僕」と呼ぶのか[Earth編]

こんにちは! A Tale of Thousand Stars JapanFCです!

さて、前回の記事の中で、私たちのFCが、Mixの一人称を「僕」に、二人称を「君」に決めたいきさつについてお話しさせていただきました。

前回の記事をまだお読みになっていない方は、ぜひご覧ください!

1000stars-jfc.hatenablog.com

今回は、そのEarth編、Earthの一人称を「僕」、そして二人称を「お前」に決めることになった経緯を説明させてください!

我々はTwitterへ向かった

さて、Earthが自分をどう呼ぶのか、そしてMixをどう呼んでいるのかを探るために、私たちはTwitterへ向かいました。

というのも、どうやらタイの人は一人称と二人称を人によって使い分けるようなのです……。

考えてみれば日本語話者も同じで、関係の近い上司や部活の先輩相手だと「僕」、取引先なんかだと「私」、友達相手だと「俺」みたいに、相手によって人称を変えることってありますよね。

というわけで、TwitterでEarthがMixと会話しているところを探し、なおかつ人称が現れているツイートをピックアップします。

これが大変なんです……。英語であれば、主語はよほどのことがない限り省略してはいけないので、主語をピックアップするのは簡単なんですが、タイ語はおそらく主語が省略可能なので(日本語みたいな感じでしょうか)、会話している中で主語が出てくる文ってあまりないんですよね。

前の記事でも紹介した通り、Earthのツイートはなかなか英訳されておらず、英訳されて主語が「I」とか「you」とかになっていても、元のツイートにも主語があるとは限らないので、この作戦は困難を極めました。

そしてついに、

見つけました。

見つけましたよ!!

これはMixが、いろんな分野のクイズに答えて科目ごとに点数が出るというアプリの結果をツイートしたものに、Earthが「あなたやるね」みたいな感じで返事をしている部分になります。

この「เธอ」というのが、二人称に当たるのです!

「เธอ」ってどんな二人称なのか

さて、この「เธอ」なる単語について調べると、頼れるタイ語辞書ごったいには、「1.君、あなた」「2.彼女」とあります。

ビンゴです!!

ではこの二人称がどういう場面で使われるのかについてですが、こういうときに頼りになるのは論文! 論文を読もう!

ということで、検索すると、スニサー・ウィッタヤーパンヤーノン(斎藤)「タイ語での二人称表現の使用意識とタイ語教育の課題」*1という、このために書かれたかのような論文が!

この論文では、様々な二人称が、日本語と英語の文法書でどのように解説されているか並んでいます。

そこでこの「เธอ」に当たる「thəə」のところの説明を見てみます。(孫引きになりますが、本件の性質上お許しください)

a. (1)仲のいい女友達によって使われる「あなた」、(2)子供に話しかけるときに使う、(3)お互いに話しかけるときカップルによって使われる「あなた」

b. 対等か目上の人に話しかけるために男性や女性が使う最も丁寧な表現、あるいは丁寧に知らない人に話しかけるために使う表現

c. 相手との間に距離を置く感じ。目上の人に対しても使えるが、親しい間柄ではほとんど使われない。

d. 丁寧に言う場合

e. あなた(二人称の代名詞)、~さん(敬称)

〔a、bについては拙訳〕

これは、a~eまでの5つの参考書を比較しているという意味になります。cのように「親しい間柄ではほとんど使われない」と書いているものがある一方、aのように「カップルによって使われる」としているものもあり、謎は深まりますね。

もしかすると日本語の「あなた」のようなイメージで、丁寧な表現としても使うけれど、奥さんが旦那さんのことを「あなた」と呼びかけるような感じなのかもしれません。

「เธอ」を発音したい!

ここまで来ると、この「เธอ」を発音してみたいところですよね。

発音記号は先ほど述べた通り、「thəə」。

そして、この〝ə〟というのは、普段日本人が意識しない音なので、発音が結構難しい……。いや、難しいはずはないんです。この音はシュワーと呼ばれ、日本語では「あいまい母音」と呼ばれたりします。つまり、あいまいに口を開いてテキトーに音を出せば、高確率でこの音が出ます。

英語が分かる方向けに言うと、これは「England」の〝a〟の部分の音で、アともウともオともつかない音が出ているのが分かります。

この〝ə〟を発音したい日本人の皆さん、いきますよ。

まず、「ア」と大きく口を開けて発音してください。

そのまま、口を半開き程度まで閉じます。その際、舌を動かしてはいけません。そうすると、唸っているような音が出ると思います。それが〝ə〟です。

ということで、その母音のまま、hの方は、そもそも脱落しやすい音なので(韓国語のㅎが前にパッチムがあると脱落するイメージです)、tのような音だけを最初につけ、ある程度伸ばすと、この単語が発音できます! 多分!!

一人称を探して ~更なるタイ語の森の奥深くへ

問題は一人称です。

 ここに出てくる「ฉัน」というのがどうやら一人称らしいと突き止めた我々は、その一人称について調べるために、タイ語の森の奥深くへ分け入っていきました。

発音記号は「chǎn」のようです。普通に「チャン」と発音すれば通じると思うのですが、重要なのは、「チャ」の時に音をできるだけ低く抑えて、「ン」に向かうときにそれを上げることですね。

さて、ここでも頼れるタイ語辞書ごったいさんの説明を参照すると、次のような記述が……。

男女ともに使用はできるが、主に女性が使う。
男性が使うとオカマと思う人もいるらしい。

えッ!

驚かずにはいられませんでした。

そこで我々は、最後の手段…………そう、「タイの人に聞いてしまおう」を実践しました。(Mixのときと同じ結末ですみません)

有識者に聞く!

そこでお話を伺ったのが、EarthとMixの会話については誰よりも見ているであろう、EarthMixx Official Thailandの皆さんでした!

しかしここで小さな事件が勃発します。

というのも、私たちが「質問してもいいですか?」とDMで尋ねると、「ダメ!」と言われてしまったのです。

微笑みの国タイの人々はきっと優しく「なんでも聞いて!」と言ってくれるだろうと思っていたのに……と落ち込んだりもしました。

その後、「え、ごめんなさい……質問なんかしちゃダメなんですね」と子供みたいに拗ねたことを言うと、「違う、いいよ、質問していい、そう言いたかったの、ごめん(笑)」と返信が!

なぜこんな行き違いがあったかというと、私が「質問してもいいですか?」と聞くときに、普通使う「Can I ask you a question?」のような表現を使わずに、「Do you mind if I ask you a question?」と聞いてしまったんですね。

これは直訳すると「もし質問したら、ご迷惑でしょうか」という意味になるので、普通に「質問してもいいですか?」と聞くのとは、答えが逆になります。

つまり、「質問してもいい」ときにはNo(迷惑ではない)と、「質問しちゃダメ」なときにはYes(迷惑だ)と答えなきゃいけないんですが、それがうまく伝わりませんでした……国際交流って難しい……。

ということでいよいよ「EarthはMixと話すとき、一人称はฉันを、二人称はเธอは使ってるのを見たんだけどいつもそう?」と聞いてみると、「そうだよ」とのお返事をいただきました。

どうやら一人称「ฉัน」を使う男性もいる様子。

日本語はどうするか

ということで、問題は、その一人称「ฉัน」と二人称「เธอ」をどう訳出するかです。

一応当FCでは一人称は、女性が使うような雰囲気の一人称として「僕」を、そして親友同士や恋人同士が使うような二人称として「お前」を採用しました(丁寧な表現ではなくなってしまいましたが……)。

特に「お前」という二人称には苦手意識をお持ちの方もいると思いますが、こうした事情で、他に適切なものを見つけられませんでした。申し訳ありません!

 

今後も当FCではTwitterやブログを通して、A Tale of Thousand Starsの情報を共有したり、その主演EarthとMixの近況をご報告したりする予定です。今回みたいに、当FCの「言い訳」を述べさせていただく機会もあるかと思います。

温かい目で見守っていただけると幸いです!

*1:東京外国語大学論集』第99号